ビジョンや啓示は得られなかったものの、少なくとも、思いっきり吐き戻せた。浄化はできたのかもしれない。それだけで、アヤワスカの洗礼は受けられたものと思い、今回の旅は終わりにしよう。私は自分自身にそう言い聞かせていた
最後に参加者全員が車座になり、皆ひとことずつ感想を述べる。まだ何もしゃべれずうなだれている人も数人、私は最後の最後でグロッキーになっていたが、感想を述べてシャーマンに感謝を伝えた
やや重い体を持ち上げて外に出ると、またぞろ吐き気に襲われ、トイレに駆け込んだ。また気持ちよいほどに吐き戻す
ふらふらしながら戻ると、皆がシャーマンとの別れを惜しんでいる。それぞれ挨拶をすませると、三々五々家路に向かう。私もシャーマンの乗る車を見送り、ゆっくり横にあった椅子に腰かけた
すると、、、、
シャーマンの乗る車のテールランプが遠ざかっていく。そしてブレーキランプを踏んだ時、ブレーキランプの明かりが私の脳を押し広げるように入ってきたのが分かった。
「ん？なんかおかしい。なんだこれは？」
私は自分の体に異変が起こり始めているのが分かった。目をぱちぱちさせながら、ふと上を見ると、黄緑色のアメーバのようなものが静かに発光しているのが見える
「んんん！なんだこれは？」
あるはずのないものが見える。小さなパニックを起こしながら、状況を把握しようとするも、まるで脳に手を直接触れてマッサージされているかのような陶酔感が始まる。目も開けていられず、思わず首をうなだれてしまう。しかしなんと心地よいことか。参加者の数人が別れの挨拶に来てくれる。ブラジル人ばかりだったから、皆握手やハグをしに来るのだが、正直、そのままにしておいてほしいほど、私は自分の変化に戸惑っていた。うつろな目をしていただろう。おざなりな握手をしていただろう。しかし、信じられないことだが、儀式が終わって、最初のアヤワスカを飲んで8時間後に、私の「ジャーニー」は始まったのだ
既に明るくなり始めた前庭を見ながら、私は自然に頭がクックッと動くのに任せる。極彩色の色や幾何学模様が次々に現れては消えていく。そして気持ちよくて気持ちよくてたまらない
しかし、座っているのもおっくうになっていた私は、裏の宿泊所に横にならせてもらうことにした。ファシリテーターも驚いていたが、儀式が終わり、シャーマンが帰ってから、私はただ一人のセレモニーを楽しむことになったのだ。しかし宿泊所までも一人では歩けないほどよろける。体の力は抜けて、法悦感に自分の顔がいやらしいほど、にやけているのが分かる。周囲の人にも、「Estou muito feliz, muito feliz agora.（幸せだ、幸せだ、私はいま幸せなんだ）」と思わず口走ってしまう
宿泊所には、遠方に住む者なのだろう、男性がすでに2名眠りについていた。起こさないように気遣いながら横たわると、目まぐるしくアヤワスカの洗礼が始まった