こうして私は、ついに3年越しの想い叶って、アヤワスカと対面することとなる
1週間ほど果物ジュースや果物を摂りながら、体を清浄に保ち、アヤワスカを受け入れる準備をする。アヤワスカを飲むと、ほぼ全員が激しい嘔吐に苛まれる。食事に気を配るのは、嘔吐物を少なくするためもあるだろうが、何よりも体がアヤワスカを純粋に吸収できるように、浄化を進めておくということらしい。また、嘔吐はアヤワスカの儀式にはつきもので、心身の浄化になっているという。つまり、なるべく吐いたほうがよいという
儀式は夜9時を過ぎた頃に始まっただろうか。セレモニールームの入り口で、シャーマンのヘルプを担当するファシリテーターがホワイトセージをいぶして、参加者一人一人を浄化する。煙に包まれた参加者は、一人ひとり厳かに儀式場に足を踏み入れる。20畳ほどの広さの部屋に、男性と女性が左右に分かれて各々座る。最後にシャーマンが入場し、部屋の空気は心地よい緊張に包まれる。シャーマンの挨拶が始まる。曰く、「我々人間は、神と会話をすることはできないが、神の声を聴くことはできる。それを実現してくれるのが、アヤワスカなのだ」
真っ暗な部屋の前部中央に、シャーマンは半跏趺坐で座り、彼の前には祭壇が供えられていた。祭壇とはいえ、地面に布を敷き、様々な仏像やシヴァ神の像、水晶や花、香炉や燭台などが並べられた簡素なものだったが、ろうそくの光のみで照らされたその祭壇は、呪術的な空気をよりいっそう高めていた。いよいよ始まるという高揚感に、私は少し涙ぐみながら、一人ひとりアヤワスカを飲む様を眺めていた
シャーマンが差し出したショットグラスには、赤土色の濁った液体が私を待っていた。軽く頭を下げ、合掌をしてからショットグラスを掌におさめると、その不気味な色の液体を愛おしそうにひと嗅ぎした。やや苦くて鼻を刺す臭いがする。味見のつもりでちびりと口にした一口に、舌がしびれるような感覚に襲われた。けれども、まずいという話は聞いていたし、まずいという表情を見せるのも、アヤワスカにもシャーマンにも申し訳ない気がした。努めて平静を装い、残りのアヤワスカを一気に流し込み、自分の席に戻った